鍛造の結婚指輪専門店を始めた理由

鍛造の結婚指輪と様々な工具

錬士の代表・国吉栄一が「無名人インタビュー」様の取材を受けました。このページの文章は、その掲載記事をもとに作成されています。

ジュエリーへの想い、錬士の誕生秘話などを率直に語らせていただきました。ぜひご一読ください。

2025年1月4日に「無名人インタビュー」様に掲載された記事は、こちらからもご覧いただけます。

https://note.com/unknowninterview/n/nf45a4a32a666

鍛造の指輪について

結婚指輪の鍛造製法 地金を溶かす

鍛造(たんぞう)製法とは?

指輪の作り方には、大きく分けて
「鋳造(ちゅうぞう)」と「鍛造(たんぞう)」の2種類があります。

鋳造は、金属を溶かして型に流し込む作り方です。
たくさん作るのに向いていて、結婚指輪のほとんどがこの方法で作られています。

鍛造は、金属を熱して叩いたり、強い力で圧力をかけたりして形を作る方法です。
何度も金属を鍛えることで、密度が高まり、強くて丈夫な指輪になります。

同じサイズの指輪でも、鍛造の方が重みがあり、しっかりしたつくりになります。

日本刀も鍛造で作られてきました。
日本の伝統的な技術が、指輪作りにも受け継がれています。

鍛造結婚指輪の魅力 「強さ、美しさ、そして心を込めて」

鍛造の指輪には、いくつかの大きな魅力があります。
それは「強度と耐久性」「仕上がりの美しさ」「つけ心地」、そして「ものづくりへの想い」です。

強度と耐久性に優れている

鍛造の指輪は、非常に丈夫です。
金属を何度も叩き、圧力をかけて作るので、密度が高く、変形やキズに強い仕上がりになります。

「金やプラチナは硬い」と思われがちですが、実はとてもデリケートな素材です。
日常の中でも意外と簡単に変形してしまうことがあります。

実際、結婚指輪を購入したカップルの半数近くが、5年以内に変形を経験しているという調査もあります。

指輪が変形する原因の多くは、もともとの強度不足です。
細くて薄いデザインの指輪や、鋳造製のものは、特に変形しやすい傾向にあります。

たとえば、デザインが美しい有名ブランドの指輪でも、
「5年以内に変形するかもしれません」と言われたら、不安になりませんか?

見た目だけではなく、長く身につけるためには、“強さ”が何よりも大切です。
私たちは、そこを何より大事にしています。

美しく、なめらかな仕上がり

鍛造で作られた金属は、内部に空気が入りにくく、気泡やムラがほとんどありません。

そのため、表面がとてもなめらかで、美しい輝きを持ちます。つや消し加工でも均一な質感が出やすく、仕上がりの完成度に差が出ます。

指に自然になじむ「つけ心地の良さ」

鍛造の指輪は、表面がなめらかで、長時間つけていても快適。
日常的に身に着けるものだからこそ、「つけ心地の良さ」を大事にしたい。

他のブランドでは感じられない、本当に快適なつけ心地を、ぜひ体感してください。

想いを込めた、たったひとつの指輪

鍛造の指輪は、鋳造のように大量生産されるものではありません。
一つひとつを丁寧に手作業で仕上げていくため、まさに「世界に一つだけの指輪」です。

今、鍛造の技術を継承できる職人は年々減っており、この技術はとても貴重なものになりつつあります。職人の手によって作られる指輪には、ただの製品とは違う、「人の想い」が込められています。

そういった背景を知った上で手にする指輪には、より深い意味や価値を感じていただけるはずです。

「長く身につける大切なものだからこそ、“ものづくりの真心”も、指輪選びの基準にしていただきたい。」私たちはそう考えています。

手作りから鍛造へ — 自分の信念を貫く決断

結婚指輪の鍛造製法 地金を叩き鍛える

ジュエリーを始めた理由

僕がジュエリーを選んだのは、父が職人で、その影響を大きく受けたからです。兄もジュエリーの仕事をしており、一緒に働いた経験もあります。

ジュエリー業界は「世襲制」と言われることもありますが、僕も自然とこの道に進むことになりました。

「手作り指輪」の専門店を開業

最初は兄と一緒に「手作り指輪」の専門店を始めました。そのときは、鍛造ではなく鋳造系の製法を使ったお店でした。

「手作り指輪」というサービスは、結婚するカップルが自分たちで指輪を作る体験を提供するもので、当時は新しく、魅力を感じて夢中で取り組んでいました。

今から10年以上前のことです。

手作り指輪業界の問題点と自分の矛盾

手作り指輪の市場は拡大し、ジャンルが確立され、多くの店舗が登場しました。しかし、手作り指輪は参入が簡単で、素人でも挑戦できるため、競争が激しくなり、質が低下してしまいました。

中には「味」として誤魔化されるような指輪もあり、強度やつけ心地に問題があるものがあったりします。

また、マーケティングに長けたジュエリーに詳しくない人が参入し、同じようなサービスを展開するようになり、差別化が難しくなってしまいました。

このような業界の現実に対して、僕は矛盾を感じ、次第に「果たして自分のサービスは日本一だと言えるのか?」という問いに直面しました。

鍛造製法へのこだわりと孤独な挑戦

自問自答した結果、答えが出ました。

それは、「鍛造製法こそ一番だ」ということです。

僕の父が鍛造職人で、その技術を受け継ぎたいという気持ちが強くありました。しかし、現実的には父も高齢で、共にやっていくのは難しい状況でした。

鍛造職人は絶滅危惧種で、本当に数少ない存在です。

そんな中で、自分の道を見つけようと決意し、鍛造結婚指輪ブランドを作りたいという思いが強くなったのです。

鍛造の誇りを守り続けて

結婚指輪の鍛造製法 形を作っていく

原点になった1本の結婚指輪

友人から、「母の形見を溶かして、結婚指輪にしてほしい」と頼まれました。

実は、一度誰かの手に渡ったジュエリーを溶かして新たに指輪をつくるのは、制作上のリスクが多く、多くの職人が敬遠する仕事です。素材に不純物が混ざっていたり、純度にばらつきがあったりと、通常よりも困難な工程が伴うからです。

難しい内容でしたが、信頼する父にお願いして、丁寧に仕上げてもらいました。

そして完成した指輪は、想像以上に美しく仕上がり、その美しさの奥にある、父の真摯な仕事ぶりと、大切な想いを形にするという誇りが、伝わってきたのです。

工賃の現実と、ひらめき

完成後、父から届いた工賃の請求は、想像よりずっと安いものでした。
このことを、昔からお世話になっている職人さんに話すと、「職人の工賃なんてそんなものですよ」と言われて、もっと安いケースもあると知りました。

そのとき、「正当な対価で、最高の仕事を届ける」サービスのアイデアがふっと浮かんできたんです。
だったらいっそ、「工賃は通常の3倍払うので、一緒に鍛造の専門店をやりませんか?」と相談しました。

職人の誇りと、今の時代の矛盾

今の時代は、60点くらいの仕事をたくさんこなす方が儲かる。
だけど、そういう仕事ばかりでは、本当にいいものを作れる職人が減ってしまう。

錬士の職人は、そんな時代の流れとは真逆の人でした。
「自分の手から、恥ずかしいものは出したくない」と、まっすぐに言い切る。
効率よりも、ちゃんとした仕事を大切にする人です。

鍛造の灯を絶やさないために

コロナ禍と低賃金の流れで、職人の仕事はどんどん減っていました。そんな状況の中、「それでも本当にいい指輪を作りたい」と気持ちが一致。

鍛造という伝統の火を絶やさないように、ブランド【錬士】を立ち上げました。

職人の地位向上を目指して

鍛造のジュエリー職人

鍛造の専門店としての独自性

競合が少ないことは、鍛造のフルオーダーメイドが可能な結婚指輪・婚約指輪を提供できる専門店がほとんどないため、大きな強みとなっています。

しかし、その特化したサービスは武器でありながらも、同時に悩みの種でもあります。

鍛造にこだわることで、高い品質を維持しつつも限られた職人しか提供できないため、将来的にその技術が守られ続けるかという不安もあります。

職人不足と技術の衰退

今、ジュエリー職人は若くて50歳って言われる時代です。

後を継ぐ若い職人も育っていなくて、まさに絶滅危惧種のような状況です。いつ引退されてもおかしくないし、時間がどんどん限られていると実感しています。

そんな中で、僕たちが作っている指輪が、将来的には「オーパーツ」のような存在になるんじゃないかと思うこともあります。

職人の誇りと未来への挑戦

鍛造の専門店は本当に大変ですが、自分のサービスが日本一だと信じてやりたいと思っているので、結婚指輪や婚約指輪には鍛造しかないと心から思っています。

僕たちは「職人の地位向上」を大切にしており、素晴らしい商品をもっと多くの人に届けたいです。

そして、素晴らしい技術がきちんと評価される環境を作りたいと強く感じています。

本物の価値を伝えるために

鍛造の結婚指輪を作る様々なハンマー

鍛造指輪の技術の継承と広まり

鍛造指輪の技術は本当に素晴らしいもので、僕たちはそれをもっと広めていきたいと考えています。

今でもこの技術を持った職人が存在していますが、残念ながらその数は限られています。

だからこそ、できるだけ多くの人に届けて、次の世代へと継承していくことが重要だと感じています。

現代の消費社会の問題

現代では、本当に良いものの価値がわかりにくくなってしまっています。詐欺広告が流行ったり、消費者が良質なものを見極めるのが難しくなっているのが現実です。

悪いものが魅力的に見える仕組みができており、その結果、本当に良いものが評価されづらいという現実があります。

本物を届けるという使命

それでも、世の中には本物を見抜ける人が必ずいると信じています。

そうした人たちに自分たちが作ったものを届け、少しでも多くの人に本物の価値を知ってもらいたいという気持ちがあります。

共感してくれる人たちとつながり、その輪が広がることで、もっと多くの人に本物の良さを伝えていきたいと強く思っています。

国吉栄一

国吉 栄一
錬士

主に錬士の運営、企画、デザインを担当しています。

ジュエリー販売、制作、店舗運営、そして会社設立など、幅広い分野で業界に携わってきた経験があります。業界の裏と表を見てきた結果、本当に正しい結婚指輪・婚約指輪をお届けしたいという想いから、錬士を立ち上げました。

おすすめコラム

錬士の鍛造指輪について

プラチナを鍛える

職人の高齢化と減少が進む中、「日本の技術」を未来へと受け継ぐことがますます困難になっています。これはジュエリー業界に限らず、伝統工芸やものづくり全般に共通する深刻な課題です。

鍛造職人はその中でも特に希少な存在です。熟練の技術を持つ職人が生み出す指輪は、単なる装飾品ではなく、日本の伝統と職人の魂が込められた特別なものです。

だからこそ、私たちはこの技術を守り、できるだけ多くの方に届けたいと考えています。

確かな技術と想いを込めた、真に価値ある結婚指輪・婚約指輪をお届けすること。

それが、私たちの使命です。

鍛造の結婚指輪サンプル

末永く身につける指輪は鍛造がおすすめ

指輪のデザインは人それぞれ好みが異なり、絶対的な良し悪しはありません。しかし、強度・耐久性やつけ心地には、明確な良し悪しがあります。

私たちは、指輪の品質の高さを”基礎”と考えています。その基礎があってこそ、本当に価値あるデザインが生まれるのです。

末永く身につけられる指輪を、確かな品質とともにお届けします。