結婚指輪が変形!最大の原因は最初から弱かった。

変形した結婚指輪

結婚指輪に使用されているプラチナやゴールドは、硬くて変形しないイメージがあると思いますが、

意外と簡単に変形します。

例え、有名ブランドの商品であっても、デザインが素敵であっても、簡単に変形してしまっては質が高い結婚指輪とは言えません。

私たちは何度も変形した結婚指輪を見てきて、何度も修理をしてきました。

結婚指輪が変形してしまった場合、「自分の使い方が悪かった」と悩まれる方が多いですが、実はそうではない可能性が高いです。

なぜなら、

変形の最大の原因は「最初から強度に問題があった」からです。

私たちについて

結婚指輪の鍛造製法 地金を溶かしたり削ったり

私たちはジュエリーの職人です。キャリアも30年以上と、世間的にはベテランと言われる経歴だと思います。

今でも毎日、指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアスなど、様々なジュエリーを製作しています。

扱う素材も、プラチナ、ゴールド、シルバー、真鍮など、多岐にわたります。

溶かし、叩き、削り、磨き。

素材の特性を理解し、知識、経験から製作を行っています。

もちろん結婚指輪についても、一点物のオーダーメイド、大手ブランドの量産物の仕上げ、リフォーム、修理など、携わってきた指輪の本数は数え切れません。

ジュエリーの知識で言えば、ジュエリーショップの販売員さん、大手広告代理店などのジュエリーに携わる方と比べ、より詳しく、より専門家であると自覚しています。

そして、今までの経験から、本当に正しい「結婚指輪の変形」についてお話していきます。

変形のデメリット

結婚指輪が変形した場合、以下の様なデメリットの恐れがあります。

  • 指を傷つけてしまう
  • 指がうっ血する
  • 指輪が抜けなくなる
  • 指輪が抜けないと衛生的によくない
  • 縁起が悪い
  • 相手に言い出せない
  • 修理代がかかる
  • 修理できないことがある
  • 修理できても、またすぐに変形する

身体的リスク

変形した結婚指輪は、指の形と合っていないことが多いので、指を傷つけてしまったり、場合によってはうっ血してしまうこともあります。

結婚指輪が抜けなくなった場合は、汚れや、石鹸、シャンプーなどが綺麗に洗い流せず、指の隙間に残ってしまうため衛生的にも悪いです。

どうしても抜けない場合は、結婚指輪を切断することになるケースもあります。

精神的リスク

結婚指輪が変形するのは縁起が悪いと考える方もいらっしゃいます。もちろん気にしない方も多いので、気の持ちようかもしれないです。

結婚指輪は夫婦で身につけるので、「縁起が悪い」「また買わないといけない」などの理由から、「相手に言い出せない」というのは意外と多いです。

物質的リスク

変形した結婚指輪の修理は、購入したブランドによって対応が変わってきます。

しかし、修理をすることで歪んだ指輪を直すことはできますが、強度を高めることはできないのです。

そのため、一度変形してしまった指輪は、金属疲労のくせがついてしまい、再び変形するのは時間の問題です。

結婚指輪が変形する原因

結婚指輪が変形するには原因には大きく分けて「強度・耐久性」「使い方」の二つがありますが、

そのほとんどが「強度・耐久性に問題がある」ことです。

では、「強度・耐久性に問題がある」とはどういうことなのか。

結婚指輪の強度・耐久性について「寸法」「素材」「製法」の三つの観点からと、「使い方」についてもご説明いたします。

寸法

寸法は、強度において最も重要な要素です。「幅」「厚み」が足りていない結婚指輪は簡単に変形します。

考え方はとてもシンプルです。

「細いは弱い、太いは強い」

例えば「幅1.8mm、厚み1.3mm」の指輪より「幅2.5mm、厚み1.7mm」の指輪の方が素材の使用量が多く、体積、重量も大きいため強くなります。

初めからしっかりした寸法の結婚指輪であれば、変形のリスクを限りなく軽減できます。

鍛造の結婚指輪 こう丸 マーキス 寸法比較

私たちが何度も見てきた「変形した結婚指輪」は、細くて薄い指輪ばかりです。

ある程度の強度を保てる、具体的な必要最低限の寸法については、「指輪のサイズ」「素材」「製法」「指輪の使い方」が関わってくるので個人差がありますが、

私たちの基準では『幅2.0mm以下、厚み1.5mm以下』の指輪をお作りしていません。

これを下回る結婚指輪は注意してください。

特に販売価格が安い結婚指輪には気を付けてください。

安い結婚指輪を実現するには、素材の使用量を減らす必要があります。そのため、細くて薄く、弱い指輪になります。そういった指輪は簡単に変形します。

例えば、プラチナ結婚指輪(ペア)10万円以下のような指輪です。

※もちろんファッションリングであれば、「細くて薄い」も個性だと思います。

素材

※素材については、結婚指輪で一般的な「プラチナ」「ゴールド」に絞りお話いたします。

素材によって、変形のしやすさは変わってきます。日本で最も人気のプラチナも一種類ではないです。

太ければ太いほど強度が高まるので、素材自体の強度はそこまで気にならなくなりますが、平均的な寸法であれば、素材にもこだわることが重要です。

鍛造の結婚指輪の素材 プラチナ ゴールド

「プラチナ」「ゴールド」どちらでも、純度100%の純プラチナ・純金を使用して結婚指輪を作ることはほとんどありません。

なぜなら、純度100%の純プラチナ・純金では強度が弱すぎて、すぐに変形してしますからです。

割金と言われるその他の金属を混ぜて、強度を高めて作られています。

鍛造の結婚指輪 Pt950 プラチナ

プラチナの結婚指輪は、Pt950のハードプラチナがおすすめです。

では、Pt950のハードプラチナとは何か?

プラチナの結婚指輪では「Pt900」または「Pt950」が一般的です。

これは純度を表していて、

「Pt900」ならプラチナが90%、
「Pt950」ならプラチナが95%入っているという意味です。

では残りの10%または5%には何が入っているのか?

『ここが重要になってきます。』

プラチナのジュエリーに配合する代表的な素材は以下の3つです。

  • パラジウム
  • ルテニウム
  • イリジウム

この3つの中で、最もプラチナを硬くするのが「ルテニウム」です。

この「ルテニウム」が配合されたプラチナを「ハードプラチナ」と呼んでいます。

全てのプラチナの結婚指輪に「ルテニウム」が配合されているわけではないです。

そのため、注意をする必要があります。

プラチナの配合についてはブランドごとに違いがあるので、正確に知るためには尋ねるしかないですが、一般的な傾向はあります。

  • 「Pt900」はプラチナが90%、パラジウムが10%で、ルテニウムを入れない配合を使用しているブランドが多い
  • 「Pt950」はプラチナが95%、ルテニウムが2~3%、残りをパラジウムというブランドが多い

「Pt900(パラジウム10%)」のプラチナは意外と変形しやすいので、かなりしっかりした寸法で作る必要があります。素材にこだわりがあれば、選択肢から外してもいいと思います。

そのため、プラチナの結婚指輪では「Pt950のハードプラチナ」がおすすめになります。

※先述した通り、プラチナの配合について正確に知るためには、ブランドごとに尋ねることをおすすめします。Pt900でもハードプラチナだったり、パラジウムフリーなどのこだわった素材もあります。Pt950でもハードプラチナでないものもあります。

鍛造の結婚指輪 K18 イエローゴールド

ゴールドの結婚指輪では「K18」が一般的です。海外ブランドでは「Au750」と刻印されていることも多いですが、どちらも金が75%入っているという意味です。

残りの25%は色味によって配合が変わります。

  • イエローゴールドは、銀を15%、銅を10%
  • ピンクゴールドは、銀を5%、銅を20%
  • ホワイトゴールドは銀と銅とパラジウム

「イエローゴールド」「ピンクゴールド」「ホワイトゴールド」はメジャーな色味のゴールドで、しっかりとした寸法で作れば強度に不安はないですが、珍しい色味のゴールドには注意が必要です。

「K24」「K22」などの高純度のゴールドは、とても柔らかく変形しやすいです。

もし、結婚指輪にこの素材を使用する場合は、極太の寸法で作るか、コンビネーションでポイントとして使用するか、どちらかがおすすめです。

珍しいカラーゴールドで、「K18グリーンゴールド」「K18ブラックゴールド」があります。こちらも、とても柔らかく変形しやすいゴールドです。

「色味が個性的」「人と被りづらい」という理由から選ばれる方がいますが、こちらも、極太の寸法で作るか、コンビネーションでポイントとして使用するか、どちらかがおすすめです。

製法

指輪の製法は大きく分けて「鋳造(ちゅうぞう)」「鍛造(たんぞう)」の2種類があり、変形しづらい結婚指輪のためには「鍛造(たんぞう)」がおすすめです。

結婚指輪の鍛造製法 地金を溶かす

「鋳造(ちゅうぞう)」とは、溶かした金属を型に流し込んで指輪を作る製法です。金属を流し込む際に、気泡が入ったり、密度にムラがでたりと、強度が弱くなる原因ができます。

「鍛造(たんぞう)」とは、金属を直接叩き、鍛えながら指輪を作る製法です。金属を直接叩き、鍛えることによって、気泡の隙間がなくなり、密度が高くなり、強度が増していきます。

「鍛造(たんぞう)」で結婚指輪を作ることで、強度が高まることは事実ですが、それでも細くて薄い指輪が弱いことには変わりありません。

「鍛造(たんぞう)」なので、「幅1.5mm、厚み1.0mmでも大丈夫」というブランドもありますが、私たちならそれを結婚指輪として販売することはできません。それは心が痛むからです。

使い方

結婚指輪の使い方によって変形することがあると言われています。

しかし、結婚指輪が変形した方に話を伺っても、皆様「これといった思い当たることはありません」といった感じです。

それもそうなのです。

一般的に言われている変形原因は、日常にありふれているのです。

それでは、一般的に言われている代表的な結婚指輪の変形原因を見てみましょう。

  • 指輪を身につけたまま重いものを持つ
  • 電車やバスのつり革や手すり
  • 車や自転車の運転
  • 拍手をする
  • スポーツ
  • 日常的な家事

もはや、「指輪をつけるなっ!!」て感じですね。

もちろん「落とした」「投げた」「踏んだ」なんてことであれば、使い方が悪かったと言えると思いますが、上記のような原因で変形したのであれば、本質としては「結婚指輪の強度」を疑うべきです。

最初からしっかりした結婚指輪であれば、日常生活で変形することは珍しく、変形してしまう方を極端に減らすことができると思っています。

なぜ強度に問題のある結婚指輪は多いのか?

私たちは、一生ものとなる結婚指輪は、一生に耐えられる品質が必要であると考えています。

しかし、残念なことに簡単に変形したり、歪んでしまう結婚指輪がたくさん売られています。

こんなセリフがあります。

≪ふたりがナット(締結部品の一つ)を結婚指輪にするのは尊重するが、ナットを結婚指輪として売るな≫

ふたりだけの思い出、世界観から選ばれる結婚指輪は、例え粗悪な金属、木、プラスチックでも、尊重されるべきです。しかし、粗悪なものを「永遠の愛を表すとされている結婚指輪」という商品名で、作り販売するなという意味です。

※1991年放送のテレビドラマ『101回目のプロポーズ』のワンシーンから生まれたセリフです。(世代がばれますね笑)

ではなぜ、簡単に変形したり、歪んでしまう結婚指輪が売られいるのか?

それは需要があるからです。

「需要があるなら問題ないじゃん!」と思いますか?

簡単に変形したり、歪んでしまう結婚指輪の一番の原因は寸法で、指輪自体が細く薄いということです。

ジュエリー職人は、強度の弱い結婚指輪だとわかって作っています。
もちろん販売スタッフもわかっています。

しかし、お客様にそれを伝えることは基本的にはしないです。
(※こだわっているブランドは伝えてくれます。)

なぜなら需要があり、自分たちも細くて弱い指輪を販売しているからです。

  • ファッションリングでは、華奢で可愛いと、細身のデザインを好む人は多く、その感覚で結婚指輪を選んでしまう方がたびたびいらっしゃいます。
  • 細身の指輪は素材の使用量が少なく、価格が安いのも魅力の一つです。
  • そして、プラチナやゴールドの指輪が簡単に曲がると、多くの方は知らないです。

例えお気に入りのブランドだったとしても、デザインが素敵だったとしても、価格が安くても、

「強度が低く変形のリスクが高いです。」と説明されれば、

それでも、その結婚指輪を購入検討しますか?

私からすると、「耐震性に不安があり、雨漏りするおしゃれな家」を売っているようなものです。

  1. 結婚指輪の強度について真実を伝えてしますと、華奢で可愛いデザインや、低価格の商品を売れなくなってしまいます。
  2. 結婚指輪にはリピーターがないので、修理があるとビジネスチャンスを広げることができます。
  3. 修理をしにきたご夫婦に、結婚指輪の買い替え(再購入)を進めることができます。

悪い言い方をすると、情弱ビジネスの様な状態になってしまっています。ジュエリー業界の闇ですね。大手もやっています。

ではなぜ、あまりクレームにならないのか?

それは、人の心理を逆手に取ったマーケティングがあるからです。

なぜクレームにならないのか?

残念なことに簡単に変形したり、歪んでしまう結婚指輪がたくさん売られています。

同時に、結婚指輪が変形した経験を持った方も多くいらっしゃいます。

それでも結婚指輪が変形したことが、クレームになるケースはあまり多くありません。

それはなぜか?

1.そもそも変形していることに気づいていない

指輪が体の一部になっていて、指輪が指の形になっているというパターンです。

  • 一度付けたらずっと外さない
  • もはや指から取れない

指輪が取れないというのはデメリットでもありますが、本人が問題ないなら大丈夫かもしれないです。

おばあちゃんで、指より小さい指輪をしている方もいらっしゃるいます。しかし、なにかあったときの責任は負えません。

2.「気にしない」または「言えない」

男性で指輪に興味がない方だと、「全然気にしていない」という方もいらっしゃいます。

結婚指輪は夫婦で身につけるので、結婚指輪が変形したことを相手に伝えられないという方もいらっしゃいます。

例えば、「縁起が悪い」「また買わないといけない」などの理由で言い出せないといったパターンです。

3.口コミやレビュー

口コミなどのレビューは購入して間もないものばかりで、

数年経ってから変形した場合、もう口コミやレビューをする人がほとんどいないというのがあります。

4.自分を責める傾向がある

日本人は特に自分を責める傾向があります。

  • 自分の使い方が悪かった
  • せっかく作っていただいたのに申し訳ない

といった具合です。

5.ブライダル業界では有名な心理学

ブライダル業界では有名な心理学があります。

結婚をするふたりは当然、「最初で最後」「一回だけ」という思いで結婚をされるわけですから、『絶対に後悔したくない』という心理が働きます。

そして、その心理から決断したことによって、『自分たちは間違ってない』という心理がさらに働きます。

もちろん1~4についても理解しています。

その心理を逆手に取るというのが、ブライダル業界では当たり前のマーケティングになっています。

ジュエリー業界の闇の側面でもあるのですが、結婚指輪・婚約指輪はブライダル業界の中では闇が薄いほうで、最も闇が深いのは広告代理店や結婚式関係だと思います。

6.予防線を張っている

結婚指輪が変形するということは、どのブランドもそれとなくホームページに書かれていたりします。

例えば、アフターサービスの一環で「変形の修理」が書かれていたりするので、内心は、そもそも変形するというスタンスで販売されているということです。

おそらくクレームを入れても、よほどのケースではない限り、受け付けてもらえることは難しいと思います。

以上の理由から、クレームはあまり上がってこないです。

変形で後悔しないように、初めからしっかりとした結婚指輪を見極めるようにする必要があります。

結婚指輪が変形する原因のまとめ

以下の内容は変形の原因になります。

  • 『幅2.0mm以下、厚み1.5mm以下』
  • Pt900(パラジウム10%)の細身リング
  • 高純度の素材(Pt999、K24、K22など)の極太ではないリング
  • 特殊な色味のゴールド(K18グリーンゴールド、K18ブラックゴールドなど)の極太ではないリング
  • 「鋳造(ちゅうぞう)」の細身リング

強度。耐久性が低い結婚指輪でも、全ての人が変形するわけではないです。

変形しない方も多くいらっしゃいます。

  • 『使い方』の説明で上げた変形原因に当てはまらない方
  • 指輪を身につける頻度が少ない方
  • こまめにつけ外しをしている方
  • そもそも結婚指輪を身につけない方
  • 指輪のサイズが極めて小さい方

私たちとしては、どなたでも安心して末永く身につけていける結婚指輪をお作りしたいと考えています。

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職人の高齢化、職人の減少によって、「日本の技術」をお届けするのには、もう時間が限られています。これはジュエリーだけでなく、様々な業界にも言えることだと思います。

そんな中、私たちは少しでも多くの方に「日本の技術」をお届けしたいと考えました。

値段の高い、安いは関係なく、しっかりとした結婚指輪を届けたい。

それが私たちの想いです。